・葛城/橘
 葛城の由来は、奈良時代に実在したという佐為王の兄、葛城王から採用しました。橘は臣籍降下後の姓に当たります。

・五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする/詠み人知らず『古今和歌集』夏の項所収
 題名の和歌は、橘の木について調べるうちにたどり着いたもので、ヒカルと佐為の永遠の別れとなった月と重なったのは偶然です。たぶん暦の読み方も違うので。でもその偶然の一致が何だか嬉しいです。
 和歌の本来の意図としては、詠み手から旧友(かつての恋人とも)に昔を惜しんで宛てたものですが、今回は、橘の香りによって自分のことを思い出し再び現世に現れてはくれないだろうかという葛城の心情を重ねたもので、この場合の詠み手は佐為になります。佐為に詠んで欲しいと願う葛城はいつかその気持ちを手放すことができるのか、みたいなところもあったりなかったり。葛城は文雅に通じていないのでこの和歌の存在も知らないのですが。

五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする・あとがき